兎吊木垓輔の猫猫殺し―再殺したる―

猫猫先生≪猫三昧≫松代藩の藩政改革を成し遂げた恩田木工の事跡を書いた『日暮硯』の冒頭には、木工の主君だった真田の殿様が、若い頃家臣から、鳥を飼ってはと勧められて、では大きな鳥籠を作れと命じ、できあがるとその家臣に中に入れと言い、鍵を締めて、このまま放っておいたらどうか、と尋ね、それは困りますと家臣が答えると、そうであろう、鳥とて同じである、以後そのようなことは言わぬように、と諌めたという話が出てくる。」

兎吊木垓輔≪害悪細菌≫「ペットが野生の動物を家畜化して作り出された生物であることも、当然知っているだろうね? 家畜。それについてどう思う?彼ら―あえて<彼ら>と呼ぼう―彼らは生物として、人間に敗北を喫したのだと思うかな?」

猫猫先生≪猫三昧≫「違うんですか?」

兎吊木垓輔≪害悪細菌≫「違うね。違うどころか丸逆だよ。結果、家畜化された結果、改良された結果、彼らはより栄えた。人間によって保護され、人間によって育成され、人間によって量産され、生命体として飛躍的にその勢力(シェア)を伸ばしたのだ。人間と共生することによって―否、人間に寄生することによって、彼らは生命体として不動の地位をえた。違うかな?」